令和6年度は、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)から採択を受けた「三笠市H-UCG(石炭地下ガス化)によるブルー水素サプライチェーン構築実証事業」のほか、令和4年度にCO₂地下固定化実証を行った弥生双葉町の坑井を活用し、さらに深い位置にある石炭層まで掘り下げ、より多くのCO₂を圧入することを目的に、陸域でのCCS/CCUS実証を行います。
この実証は、企業版ふるさと納税による寄附金のほか、国のデジタル田園都市国家構想交付金、北海道の道内炭層エネルギー等利活用促進事業費補助金等を活用することで実現しました。
また、環境省実証事業と連携し、CO₂地下固定におけるモニタリング技術の開発として、CO₂の圧入前後における地下構造の探査を行い、地下でCO₂がどのように動くかなどを調査しました。
※CCSとは… 排出されたCO₂を他の気体から分離して集め、地中深くに貯留・圧入
すること。
※CCUSとは…分離・回収したCO₂を利用することであり、ドライアイスや溶接などに
直接利用する方法が一般的で、三笠市では地下でCO₂と反応し固化する
スラリーを圧入し、地盤の安定化を図る。
三笠市H-UCG事業について
令和4年度に実施したCO₂地下固定化実証について
令和6年度CO₂地下固定化実証イメージ図
追加掘削の実施
令和4年度実証時に地下約430mまで掘削し、CO₂地下固定化実証を行った坑井が地下400m付近で閉塞していることが昨年度確認されました。このことから、地下約430mまでの再掘削および50mの追加掘削を行い、令和4年度実証時にCO₂の圧入対象とした石炭採掘跡(幾春別層5番層)より深い位置にある採掘跡(同4番層)へ到達することができました。
追加掘削の結果、地下400m付近のコアは、令和4年度に圧入したスラリーが反応し固化したものであることが確認できました。加えて、地下470m付近に石炭採掘跡(幾春別層4番層)と思われる空隙の多い石炭層を確認できました。
追加掘削(ボーリング)の様子
地下から掘削したコアを取り出す様子
令和4年度に圧入したスラリーが固化した層(地下402m付近)
石炭採掘のため人が入り込んでいたことが推測される。
CO₂マイクロバブル水とスラリー材の地下圧入
地下固定の方法として、1つ目にCO₂をマイクロバブルと呼ばれる目に見えない大きさの泡の状態で水に溶解させることで、CO₂マイクロバブル水を作り、これを地下に送り込みます。2つ目に、CO₂と反応して固化するスラリー材を地下に送り込み、地下でCO₂マイクロバブル水と反応させて固化(炭酸カルシウム化)させます。
令和6年度の実証では、令和4年度に課題となっていたCO₂マイクロバブル水におけるCO₂の高濃度化と、スラリー材の低廉化を目指します。スラリー材について令和4年度は高炉スラグを主成分としていましたが、令和6年度はフライアッシュ(石炭燃焼灰)や間伐材などの木質バイオマス燃焼灰などを用いた安価なものとできるよう実証します。
※高炉スラグとは… 溶けた銑鉄を製造する高炉で鉄鉱石に含まれる鉄以外の成分と、副原
料の石灰石やコークス中の灰分が一緒に溶融分離回収されたもので、
主にセメントの原料として利用される。
令和6年10月4日~8日にかけてCO₂マイクロバブル水およびスラリー材の圧入を行いました。また、環境省実証事業と連携したCO₂の挙動調査は10月24日に終了しました。現在は収集したデータの分析作業に移っており、具体的な結果については令和7年3月に実施する研究報告会で説明予定です。
実証期間中に行った一般公開には市内外から264名の企業・市民の方が参加され、室蘭工業大学出口剛太客員教授、板倉賢一特任教授からこれまでの経緯や実証の内容、実証設備について説明がありました。
実証地の様子
高炉スラグ
フライアッシュ
スラリー材(比率 高炉スラグ:フライアッシュ=1:1)
マイクロバブル水とスラリー材を圧入する坑井と圧入管
一般公開の様子