当館学芸員が日本古生物学会で2件の研究成果を発表しました
2016年1月29日~31日に京都大学で開催された日本古生物学会第165回例会に於いて、当館の学芸員が2件の研究成果の発表を行いました。
1. 高桒祐司・加納学・森木和則・早野久光「北海道・南芦別地域から産出した白亜紀板鰓類化石群」
発表内容の要約
北海道芦別市に分布する中生代後期白亜紀のコニアシアンと呼ばれる時代の地層(約8600万年~8800万年前)から発見されたサメの歯化石について共同研究の成果を発表しました。この産地からはサメの歯化石が豊富に見つかり、現在のところ5目11科12属12種もの種類が確認されています。発見された化石の中には、生きた化石として知られる古代ザメ「ラブカ」の仲間の歯も含まれていました。一つの場所から多くのサメの歯化石がまとまって発見されるケースは、北海道の後期白亜紀層からはあまり知られていません。
これまで後期白亜紀のサメの歯化石について、日本やロシアの極東地域などでは、まとまった研究報告はほとんどありませんでした。そうした中で、今回の研究は、当時の北西及び北太平洋地域にどのようなサメがいたのか、またサメたちが後期白亜紀を通してどのように世界の海を移動し、そして進化を遂げていったのか、ということについて重要な手がかりを示すことができました。
なお、研究発表に用いられたサメの歯化石は三笠市立博物館に所蔵されていますが、研究継続中ですので、当面の展示予定は未定となっています。講演要旨はこちら
2. 相場大佑「白亜紀アンモナイト類 Tetragonites glabrusの性的二型:産状解析と個体発生解析より」
発表内容の要約
北海道から産出するアンモナイト類の1種「テトラゴニテス・グラブルス」は、しばしば、数個体が集まった状態で地層から見つかります。学芸員の相場が、三笠など道内6地域から250個以上の化石を採集し、これらの化石の特徴を詳しく調べた結果、①ほとんどの密集産状は直径1~2cmの「小型」と直径4~6cmの「大型」から構成されている。②「大型」だけでなく「小型」の個体にも成熟と思われる形跡が見られる。③「小型」と「大型」の個体数はおおむね1:1であること、などが明らかとなりました。「小型」の個体にも成熟と思われる形跡が見られたことから、「小型」と「大型」は、子供と大人ではなく、同一種の「オス」と「メス」である可能性を示しました。
成熟したオスとメスの集まった様子は、アンモナイトの生殖活動などの生態を反映したものである可能性などが考えられます。今回の予察的な発見は、アンモナイトがどのような生活をしていたのか、一億年前になぜ栄え、その後なぜ絶滅してしまったのか。その謎の解明に迫る重要な成果です。講演要旨はこちら
約1億年前の北海道の姿が少しずつですが、明らかになってきました。道内には知られざる太古の謎がまだまだたくさんあります。三笠市立博物館では、三笠やその周辺地域に、どのような自然遺産が眠っているのか、また、過去に何が起きていたのかを今後も明らかにしていきます。
講演要旨の出典:日本古生物学会第165回例会 講演予稿集 p. 23, 52
http://www.palaeo-soc-japan.jp/meetings.html (日本古生物学会使用許可取得済)