展示解説のお話~白亜紀の飛べない海鳥「ヘスペロルニス」
「展示室の裏側から」といいつつ、今回は思いっきり展示室からの話題です。
5月12日、北海道大学理学2年生が講座の一環で当館の見学に来られました!引率者は、いまや知らない人はいない恐竜研究の第一人者、小林快次先生です。
40分間の解説ですが、前半のアンモナイト化石の解説は私、学芸員の相場が、
そして後半の脊椎動物化石の解説は、ティーチングアシストで来られた北海道大学大学院博士課程の田中公教さんに行っていただきました。
田中さんは、白亜紀の鳥類化石を専門に研究されています。
現在、田中さんは当館で展示中の海鳥「ヘスペロルニス類」の標本の研究を進めており、標本の観察および標本撮影のために、当館にたびたび来館していただいています。
ヘスペロルニス類の化石は、当館で展示中の三笠産の個体(頚骨や大腿骨の一部;札幌市の解良康治氏により寄贈)以外は北海道からほとんど見つかっておらず、大変珍しいものです。
研究の当事者に、展示中の標本の前でヘスペロルニス類の生態や進化などを語っていただきました。
北大の学生さんに混じって聞いていた私の感想です。
「面白すぎる!!」
田中さんの解説によると...
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・ヘスペロルニス類は現在のペンギン類と同様に、空を飛ぶことができなかった。
・ヘスペロルニス類は生命の歴史で「はじめて海へ進出し、潜水をはじめた鳥類」である。
・ヘスペロルニス類の化石は、世界各地で見つかるが、多くの場合、海棲爬虫類「モササウルス類」の化石と共産し、外国の博物館ではワンセットで展示されていることが多い。両者は「食う-食われる」の関係だったのではないかと考えられており、実際にモササウルス類の胃の部分の化石からは、ヘスペロルニス類の骨の化石が見つかったことがある。
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とのことです。たしかに、三笠産のヘスペロルニス類の化石も、モササウルス類の「エゾミカサリュウ」が産出した地層とほぼ同時代の地層から産出しています。約8500万年前、海の底だった三笠には、これらの生き物が同じ場所で確かに生きていたのです。両者は「食う-食われる」の関係だったのかもしれないですね。
ほぼアンモナイトのことで頭がいっぱいの私にとっては、まさに目からウロコ、衝撃のお話でした。私もまだまだ勉強が必要です!
そして、研究の当事者が展示を語ると、こんなにも説得力を持って聞こえてくる、ということが良くわかりました。田中さん、ありがとうございました!
私たち当館学芸員も、大昔の生き物の進化や生態の新発見を求めて山を歩き、日々研究しています。
・へんてこアンモナイトのへんてこ進化のお話
・アンモナイトは死んだ後どうなっちゃうの?というお話
・サメのウンチの化石のお話
などなど、当館では3人の学芸員がそれぞれの専門分野の「化石に隠された驚愕の真実」のお話をたっぷり用意しています。
全国の小中学校・高校・大学の先生方、教育旅行でのご来館、心よりお待ちしております!
(主任研究員 相場大佑)