館長コラム 「こんな化石も展示しています」第7回 ーオパール化石-
このコラムは化石の持つ魅力について、当館に展示されている化石を紹介しながら、当館館長が独断と個人の感想を交えて、皆様に楽しくお伝えする連載です。今回は、美しい宝石に変化してしまった化石を取り上げます。
宝石扱いされる化石たち
皆さんのイメージとして化石といえば、地味な見た目をしている、という印象があるのではないでしょうか。実際、地面の下から掘り出されたものですし、ほとんどの場合そのイメージは間違ってはいません。
ただ、化石の中には、その見た目の美しさから宝石として扱われているものもあります。代表的な例として、琥珀(コハク)、アンモライトそしてオパール化化石などがあります。
コハクは地質時代に生息していた植物の樹脂(マツヤニ)の化石です。つまりコハクそのものが「化石」と言うことができます。また、よく知られているように、コハクの中には当時の昆虫が閉じ込められていることもあります。これは「虫入りコハク」と言われ高い市場価値を持っています。産地は世界中にありますが、世界史的観点からはバルト海周辺のものが有名です。近年ではミャンマーの白亜紀層から見つかるコハクに様々な生物が含まれていることで注目されています。中には驚くべきことにアンモナイトが含まれたものも報告されています。
アンモライトはカナダ・アルバータ州周辺の白亜紀層から見つかるアンモナイト化石の中で、殻が虹色に光っているもののことを「アンモライト」と呼び、宝石扱いしています。そのためアルバータ州ではアンモライトは州の宝石に指定されているほどです。
オパール化化石は、オパールに変化してしまった化石のことを言います。オパール化化石(以下、「オパール化石」と記します)は世界中から見つかりますが、宝石級となると流通量のほぼ大半をオーストラリア産が占めています。
これらの3つとも、当館で常設展示されていますが、今回はオーストラリアのオパール化石について紹介したいと思います。
オパールとは
ただ、化石の中には、その見た目の美しさから宝石として扱われているものもあります。代表的な例として、琥珀(コハク)、アンモライトそしてオパール化化石などがあります。
コハクは地質時代に生息していた植物の樹脂(マツヤニ)の化石です。つまりコハクそのものが「化石」と言うことができます。また、よく知られているように、コハクの中には当時の昆虫が閉じ込められていることもあります。これは「虫入りコハク」と言われ高い市場価値を持っています。産地は世界中にありますが、世界史的観点からはバルト海周辺のものが有名です。近年ではミャンマーの白亜紀層から見つかるコハクに様々な生物が含まれていることで注目されています。中には驚くべきことにアンモナイトが含まれたものも報告されています。
アンモライトはカナダ・アルバータ州周辺の白亜紀層から見つかるアンモナイト化石の中で、殻が虹色に光っているもののことを「アンモライト」と呼び、宝石扱いしています。そのためアルバータ州ではアンモライトは州の宝石に指定されているほどです。
オパール化化石は、オパールに変化してしまった化石のことを言います。オパール化化石(以下、「オパール化石」と記します)は世界中から見つかりますが、宝石級となると流通量のほぼ大半をオーストラリア産が占めています。
これらの3つとも、当館で常設展示されていますが、今回はオーストラリアのオパール化石について紹介したいと思います。
オパールとは
オパールは日本語で蛋白石と言われ、白色光をあてると遊色(ゆうしょく)と言われる虹色のキラキラとした輝きを発することで人気があります。日本でも見つかりますが、宝石級のものとなるとほとんど見つかりません。世界的にはオーストラリア産が世界市場の80〜95%をも占めると言われています。そのようなことから、オーストラリアではオパールは国の宝石に指定されています(ちなみに日本では、鉱物科学会により「ヒスイ」が日本を代表する石;「国石」として選ばれています)。また最近では火星でもオパールが発見され、話題となっています。
オパールは、物質としてはシリカ(二酸化ケイ素)と水の水和物(SiO2・nH2O)からできているので、成分としてはガラスに近いと言えます。ダイヤモンドやエメラルドなど他の多くの宝石とは異なり結晶からできていません(非晶質)。結晶ではないので形は不定形となります。電子顕微鏡レベルで見ると、小さなシリカの粒子が集まってできているのを見ることができます。オパールは比較的不安定な物質なので、熱や圧力を受けると変質して結晶が形成され、最終的には「石英」という鉱物に変化します。ちなみに水晶は石英の結晶です。
オパールは、火成岩と堆積岩の両方から産出します。どちらもその起源は地下水中に大量に溶けていたシリカで、それが沈澱・脱水して固まってできることは共通です。
火成岩中のものは火山活動に伴い形成されたシリカ成分に富んだ熱い地下水(熱水)が地下の岩の割れ目に溜まりシリカが沈澱してできたものです。堆積岩中のものは、地層中の岩石に含まれているシリカ成分が溶脱されて地下水に溶け、それが地層中の隙間などに流れ込み、そこでシリカが沈澱して形成されたと考えられています。
日本で見つかるオパールの多くは火成岩中から見つかります。対してオーストラリアではほとんどが堆積岩中から見つかります。
遊色を発するオパール
撮影地:南オーストラリア博物館 (South Australian Museum)
オパールを特徴づける遊色と呼ばれる虹色の輝きは、虹や水面に浮かぶ油膜などと同様に、光の屈折と干渉による光学的現象です。ただし、同じオパールでも遊色を発するものと、発しないものがあります。
オーストラリアのオパール
オーストラリアでは、遊色を発するオパールのことを「プレシャス・オパール(precious opal)」と呼び、高い市場価値を持ちます。そうではないオパールは「コモン・オパール(common opal)」または「ポッチ・オパール(potch opal)」と呼ばれています。産出量を比較すると、プレシャス・オパールの方が圧倒的に産出量が少なく貴重なものとなっています。
遊色の有無は、両者の内部構造の違いによって起こります。プレシャス・オパールは、大きさの均等なシリカ粒子がぎっしりと並んでできているもので、この場合、光の干渉効果が最もはっきりと現れ美しい遊色を発します。対して、コモン・オパールでは、大きさが不均等なシリカ粒子が緩く並んでできているもので遊色は現れません。
オパール中のシリカ粒子の配列イメージ図
A:プレシャス・オパールはシリカ粒子の大きさが揃い、整然と並んでいる。
B:コモン・オパールはシリカ粒子の大きさが不揃いで、きちんと並んでいない。
粒子と粒子の間は、水が埋めている。重量の5〜10%程度が水分であるとされ、そのためオパールを強く熱すると水分を取り出すことができる。
ただしプレシャス・オパールとコモン・オパールの定義と区分については、宝石業界と学問的業界の間、またそれぞれの業界内でも意味合いが異なることがあるので、用語の使い方が難しいことがあります。この文章中では、ごく単純に、遊色があるオパールをプレシャス・オパール、そうでないオパールをコモン・オパールと呼びます。
オパールは、物質としてはシリカ(二酸化ケイ素)と水の水和物(SiO2・nH2O)からできているので、成分としてはガラスに近いと言えます。ダイヤモンドやエメラルドなど他の多くの宝石とは異なり結晶からできていません(非晶質)。結晶ではないので形は不定形となります。電子顕微鏡レベルで見ると、小さなシリカの粒子が集まってできているのを見ることができます。オパールは比較的不安定な物質なので、熱や圧力を受けると変質して結晶が形成され、最終的には「石英」という鉱物に変化します。ちなみに水晶は石英の結晶です。
オパールは、火成岩と堆積岩の両方から産出します。どちらもその起源は地下水中に大量に溶けていたシリカで、それが沈澱・脱水して固まってできることは共通です。
火成岩中のものは火山活動に伴い形成されたシリカ成分に富んだ熱い地下水(熱水)が地下の岩の割れ目に溜まりシリカが沈澱してできたものです。堆積岩中のものは、地層中の岩石に含まれているシリカ成分が溶脱されて地下水に溶け、それが地層中の隙間などに流れ込み、そこでシリカが沈澱して形成されたと考えられています。
日本で見つかるオパールの多くは火成岩中から見つかります。対してオーストラリアではほとんどが堆積岩中から見つかります。
遊色を発するオパール
撮影地:南オーストラリア博物館 (South Australian Museum)
オパールを特徴づける遊色と呼ばれる虹色の輝きは、虹や水面に浮かぶ油膜などと同様に、光の屈折と干渉による光学的現象です。ただし、同じオパールでも遊色を発するものと、発しないものがあります。
オーストラリアのオパール
オーストラリアでは、遊色を発するオパールのことを「プレシャス・オパール(precious opal)」と呼び、高い市場価値を持ちます。そうではないオパールは「コモン・オパール(common opal)」または「ポッチ・オパール(potch opal)」と呼ばれています。産出量を比較すると、プレシャス・オパールの方が圧倒的に産出量が少なく貴重なものとなっています。
遊色の有無は、両者の内部構造の違いによって起こります。プレシャス・オパールは、大きさの均等なシリカ粒子がぎっしりと並んでできているもので、この場合、光の干渉効果が最もはっきりと現れ美しい遊色を発します。対して、コモン・オパールでは、大きさが不均等なシリカ粒子が緩く並んでできているもので遊色は現れません。
オパール中のシリカ粒子の配列イメージ図
A:プレシャス・オパールはシリカ粒子の大きさが揃い、整然と並んでいる。
B:コモン・オパールはシリカ粒子の大きさが不揃いで、きちんと並んでいない。
粒子と粒子の間は、水が埋めている。重量の5〜10%程度が水分であるとされ、そのためオパールを強く熱すると水分を取り出すことができる。
ただしプレシャス・オパールとコモン・オパールの定義と区分については、宝石業界と学問的業界の間、またそれぞれの業界内でも意味合いが異なることがあるので、用語の使い方が難しいことがあります。この文章中では、ごく単純に、遊色があるオパールをプレシャス・オパール、そうでないオパールをコモン・オパールと呼びます。
オーストラリアのオパールは堆積岩中から見つかります。この堆積岩は前期白亜紀に堆積したものです。前期白亜紀にはオーストラリア中央北部から北東部にかけて、オーストラリアのほぼ三分の一を覆うような広大な浅い海(エロマンガ海;Eromanga Sea)が広がっていました。この海で堆積した前期白亜紀層が分布する平坦地域のことを地形学的に大鑽井盆地(だいさんせいぼんち)(Great Artesian Basin;GAB)と呼んでいます。この地域の各地からオパールは見つかりますが、特に有名なのが、クーバー・ピディ(Coober Pedy)とライトニング・リッジ(Lightning Ridge)と呼ばれる街の周辺地域です。
オーストラリアのオパールを産出する白亜紀層の分布図
前期白亜紀層は地形的に大鑽井盆地(GAB)と呼ばれる地域を形成している。オパール産地として有名なクーバー・ピディとライトニング・リッジの位置を示しているが、他にも多数の産地がある。オパール産地の共通項として、GABの縁辺に沿って産地が分布するという特徴がある。
オパールは、地層中の割れ目を埋めたような状態で多く見つかりますが、同時に化石としても見つかることがあり、生物の殻や骨がオパール化した状態となっています。先にあげたクーバー・ピディとライトニング・リッジの両地域では、オパールを含む地層が堆積した環境が異なるため、見つかる化石の種類が異なります。クーバー・ピディは海の地層なので主に二枚貝、巻貝、べレムナイト、魚竜、首長竜など海の生物の化石が見つかります。それに対してライトニング・リッジは汽水域や陸上の湖や川で堆積した地層が主となるため、二枚貝、巻貝、肺魚やザリガニ、恐竜、マツカサ、植物の枝など、陸域の生物の化石が多く見つかります。
オパール化二枚貝化石 (幅3.3cm)
時代:中生代前期白亜紀アプチアン
産地:オーストラリア 南オーストラリア州 クーバー・ピディ周辺
所蔵:三笠市立博物館 「生命の歴史と化石」コーナーに展示中
表面に遊色が見られるが、化石全体を見ると遊色が見られる部分とそうでない部分があるので、この化石は、プレシャス・オパールとコモン・オパールの両方からできていると考えられる。全体に遊色が見られるものの方が、宝石としては市場価値が高い。また、オパールを透かして、二枚貝化石の内部に詰まっている岩を見ることができる。なお化石の表面は人工的に研磨されているので、もともと二枚貝化石の表面にあった筋などは消えてしまっており、特徴が観察できないので、二枚貝の種類などは同定できない。
オパール化二枚貝化石 (前写真と同じ標本を斜め上から見たもの)
殻頂付近に美しい遊色を見ることができる。
このオパール化二枚貝化石のできかたについて、次にイメージ図を示します。
オパール化二枚貝化石の形成過程イメージ図
イメージとしては、地層中に埋もれた化石が風化によって殻が溶けてなくなり、それによってできた地下の空洞にシリカを含んだ地下水が侵入し、シリカが空洞で沈澱・脱水してオパールができたと考えられる。
①地層中に埋もれた二枚貝化石の断面を示す。aは二枚貝化石の中に詰まった堆積物を示す。わかりやすく色を変えたが、二枚貝化石周囲の堆積物と性質は全く変わらない。
②二枚貝の殻が地下水などの影響で溶け去る。殻はカルシウムなので溶けてしまいやすいが、中に詰まっている堆積物aは溶けない。殻という支えを失ったaは、空洞の中で倒れたり、場合によっては一部が砕けたりして元々の位置から少し動く。
③空洞に、オパールの元となるシリカを大量に溶かした地下水が流れ込み、やがて沈澱・脱水して固まる。
④オパール化石として掘り出される。外見的には元々の二枚貝化石の外観がオパールによって正確に型取りされているが、内部的にはaが元々の位置からずれているため、元々の殻の厚さとオパールの厚さは等しくない。
このオパール化二枚貝化石標本を例に示したように、プレシャス・オパールとコモン・オパールが一つの標本の中に共存することも普通です。二つの境界は層状に見えることから、もしかするとシリカを濃厚に含んだ地下水からのオパールの沈澱は一度で終わらずに複数回に分けて沈澱した、もしくはシリカ密度などの違いで層状に分離して沈澱したのかもしれません。図で示した「オパール化二枚貝化石の形成過程イメージ」は単純化したイメージであって、実際にはもっと複雑なことが起きていると予想されます。
実は、オーストラリアのこれらのオパールとオパール化石がどの様にして形成されたのか、その正確な過程はいまだに完全に解明されておらず、学問的に大きな課題として議論され続けています。
オパール化二枚貝化石 (左:未研磨状態、右:同じ標本の裏側。一部研磨状態)(幅3.7 cm)
時代:中生代前期白亜紀アプチアン
産地:オーストラリア 南オーストラリア州 クーバー・ピディ周辺
所蔵:筆者蔵
上左図のように未研磨状態(採集されたままの自然な状態)だと、遊色が確認しづらい。右上図は同じ標本の裏面を示すが、一部研磨されている部分では遊色が確認できる。研磨部分の全てで遊色が確認できる訳ではないので、この標本も、プレシャス・オパール部分と、コモン・オパール部分が混在していることがわかる。
オパール化べレムナイト化石 (長さ2.9cm)
時代:中生代前期白亜紀アプチアン
産地:オーストラリア 南オーストラリア州 クーバー・ピディ周辺
所蔵:三笠市立博物館 「生命の歴史と化石」コーナーに展示中
美しい遊色を発する。べレムナイトとは中生代ジュラ紀から白亜紀に世界中の海洋で繁栄したイカの仲間。ここに示した化石はべレムナイトの「鞘(さや)」と呼ばれる部分。下の復元図参照。このべレムナイト化石のでき方は二枚貝化石と同様に、地層中に殻が溶けてしまってできた空洞に、シリカを含んだ地下水が浸入・沈澱してオパールができたと考えられる。
べレムナイトのイメージ復元図
上左は外見、上右は透視した状態を示す。べレムナイトは体の内部に殻を持ったイカの仲間で体の先端に「鞘」と呼ばれる弾丸型の殻を持つ。体そのものは軟体なので腐って化石には残らないが、鞘はカルシウム成分が豊富なため、丈夫で壊れにくい。そのため通常はこの部分だけが化石として発見されることが多い。
オパール化べレムナイト化石 (長さ2.4cm)
時代:中生代前期白亜紀アプチアン
産地:オーストラリア 南オーストラリア州 クーバー・ピディ周辺
所蔵:筆者蔵
標本の一部だけが(黄色で囲んだ部分)遊色が見られるプレシャス・オパールとなっており、この標本でも、プレシャスとコモンの両タイプが混在することがわかる。横断面と側面を観察すると、プレシャス・オパール部は層状になっていることがわかる。
オパール化石として見つかるのは、二枚貝や巻貝、べレムナイトなどの無脊椎動物が大半ですが、まれに魚竜、クビナガリュウ、恐竜などの脊椎動物化石も見つかることがあります。以下にそれらの例を示します。
オパール化した魚竜の脊椎骨
時代:中生代前期白亜紀
産地:オーストラリア 南オーストラリア州 クーバー・ピディ周辺
撮影地:南オーストラリア博物館 (South Australian Museum)
魚竜は中生代に栄えた海棲爬虫類のグループ(下のイメージ復元図参照)。このようなオパール化石は世界でもオーストラリアでしか産出せずたいへん希少である。この標本を展示している南オーストラリア博物館は、南オーストラリア州の州立博物館で、同州にはクーバー・ピディを始めオパール産地が多数あることから数々の素晴らしいオパール化石を展示している。
魚竜のイメージ復元図
イルカに似た外形を持ち、大きいもので体長15mを超える。主に魚食性と考えられている。世界中で化石が産出するが、日本では非常に稀。ただし宮城県から見つかっている「ウタツギョリュウ」は世界でも最も原始的な魚竜として、魚竜の進化を知る上で非常に重要視されている。
オパール化したクビナガリュウ (個体通称:The Addyman Plesiosaurus)
上:組み立てられた全身
下:化石として実際に残っていた部分を示す(着色部);南オーストラリア博物館の解説板より
時代:中生代前期白亜紀アプチアン
産地:オーストラリア 南オーストラリア州 アンダムーカ(クーバー・ピディ地域)
撮影地:南オーストラリア博物館 (South Australian Museum)
向かって左側が尻尾で、右側が頭側となる。頭部は見つかっていない。1968年にAddyman氏によって発見された化石で推定体長6.5m。オーストラリアでは、オパール化した首長竜の全身骨格は19世紀終わりからこれまでにおよそ5体ほどが見つかっており、この標本は最も状態が良い標本の一つ。
大型脊椎動物の骨のオパール化石は、二枚貝やべレムナイトのオパール化石とはでき方が違うことがわかっています。
前述のように二枚貝やべレムナイトは、地下で空が溶けてしまってできた空洞に、シリカを含んだ地下水が浸入・沈澱してオパールができたとされています。そのため、外観的には二枚貝やべレムナイトの形をオパールが正確に型取りしたものとなっていますが、二枚貝やべレムナイトの殻が持っていた元々の内部構造などは見ることができません(全て溶け去っているので)。
それに対して、大型脊椎動物の骨のオパール化石を調べると、元々骨の内部にあった血管などの内部組織の跡が残されています。もし骨が完全に溶けてしまった空洞にオパールができているならば、内部組織の跡が残ることはあり得ません。従って、骨化石のカルシウム成分が溶け始めるのと同時進行でオパール成分が骨の溶けた部分を代わりに埋めて行くという作用が起こっていなければなりません。
ただし、こうした作用が行われるには、物理・化学的条件やタイミングが非常に難しいことが予想されます。そうしたこともあり、これらの骨化石がどのようにしてオパール化したのか、ということは、今日までも特に大きな謎のままとなっています。
以上オーストラリアのオパール化石の話でした。このようにオパール化石については、まだまだ謎だらけです。当館にはオーストラリアのオパール化石を2点展示していますので、ご来館の機会がございましたら、ぜひよくご覧になってください。
余 談:「無断でオパール掘るべからず」
本文で書いたように、オーストラリアでオパールを産出する有名な地域として、クーバー・ピディとライトニング・リッジがありますが、以前クーバー・ピディに短時間立ち寄る機会がありましたので、それについて紹介したいと思います。
本文で書いたように、オーストラリアでオパールを産出する有名な地域として、クーバー・ピディとライトニング・リッジがありますが、以前クーバー・ピディに短時間立ち寄る機会がありましたので、それについて紹介したいと思います。
クーバー・ピディには空港などないので、自動車で行くしかありません。大型旅客機が発着できる最寄りの空港は南オーストラリア州の州都であるアデレードにしかありません。従って、アデレードからクーバー・ピディまでの1400kmの道のりは、車でひたすら走らねばなりません。道のりの3分の2は砂漠地帯(アウトバック)です。
太平洋岸のダーウィンまでオーストラリアを縦断するスチュアート・ハイウェイ。感覚的にはいつも直線。周囲は赤茶けた大地と灌木というオーストラリアのアウトバック特有の風景。時速100km以上でひたすら走ります。
所々にアリ塚がたくさん見られます。カンガルーの死体やパンクしたタイヤのかけらもしばしば見られます。やはりタイヤのパンクが一番の心配です。
クーバー・ビディに入ると道の両サイドの視界いっぱいに、たくさんの人工的な砂山が見えます。これらは皆オパール採掘で出た土砂を盛り上げた物です。地下に垂直に最深40mほどまで穴を掘るそうですが、一般的に大掛かりなやぐらを組んだりする訳ではないそうなので、地面の高さからは、砂山しか見えません。しかし砂山の数だけ縦穴が掘られていると思うと、実は地面は穴だらけと想像できます。実際グーグル・マップでCoober Pedy周辺の航空写真を見てみると、驚くほどの数の砂山と穴を確認することができます。大きな企業が大規模に採掘するのではなく、数人規模で細々と採掘しているような所が多いそうです。
クーバー・ピデイは大変暑い場所なので、住民がオパールの廃坑などを利用して地下に家を作って住んでいることでも有名です。地下ホテルなどもあります。
「危険。訪問者は留意してください。採鉱エリアは(穴に落ちるかもしれないので)危険だし、土地の所有者の許可なくオパール探しに立ち入ることは違法です。ちなみにペナルティは10万円ですから」的なやんわり警告看板。国道沿いの各所にこうした内容の看板が立っています。以前テレビ番組で何度かクーバー・ピディでオパール掘り体験というようなものを見たことがありますが、お金を払うと採掘権を手に入れられるらしいです。
街の中には、たくさんのオパールショップがあります。手頃な値段でオパール化石を買いたかったのですが、産地とはいえ、やはりかなり高価なものが多く、結局ごくごく安いものを少し買っただけで終わってしまいました。この時購入した化石の一部が本文中に写真として用いられています。
余談の余談です。クーバー・ピディではありませんが、オーストラリアの内陸部で「アンモナイト・イン」というモーテルを見つけました。強いて訳せば「民宿アンモナイト」といったところでしょうか。この付近にも白亜紀層が分布し多くの化石が見つかっているようなので、それに因んだのでしょう。ちなみに三笠にも「民宿アンモナイト」があります。やはりアンモナイトは化石として世界中人気があるようです。
ところで、砂漠地帯(アウトバック)を運転しているとすれ違う車はとても数が少ないです。せいぜい20分に1台くらいでしょうか。現地で実際に走っている時に、ここにはどうやらマナーがあるらしいことに気づきました。それは対向車とすれ違う時に、相手のドライバーに向かって、手を軽く上げて挨拶をする、という流儀です。最初は「そんな人もいるんだねえ」と気にしていなかったのですが、すれ違う度にほぼ間違いなく相手が手を上げてくるので、どうやらそれは「アウトバック・マナー」らしいという結論に至りました。
というわけで、すれ違う度に、こちらも「よっ!」と、手を上げることにしました。以後、しばらくはスムーズにすれ違うオージー(オーストラリア人の愛称)とコミニュケーションを取っていた(?)のですが、だんだんそれでは物足りなくなってきました。運転退屈ですし。そこで、相手のウケを狙うために、腕を大きく振って「喜び」を表現してみることにしました。おおらかと言われているオージーならば、きっと大喜びしてくれるに違いない。
しかし、すれ違いの相対速度は時速200km以上です。タイミングが重要です。また自分の運転中はさすがに危険そうなので、助手席にいる時に試みることにしました。というわけで、細心の注意を払い、対向車から最適視認距離になったと思われた時に、「やっほ〜い!」と両手を思いっきり振ってみました。
しかし、なんと言うことでしょう!ヒュンっ、と時速200km以上ですれ違っているにもかかわらず、相手が明らかに苦笑しているのが静止画のようにはっきりと見えました!手も控えめにしか上げてくれなかったし。
というわけで、すれ違う度に、こちらも「よっ!」と、手を上げることにしました。以後、しばらくはスムーズにすれ違うオージー(オーストラリア人の愛称)とコミニュケーションを取っていた(?)のですが、だんだんそれでは物足りなくなってきました。運転退屈ですし。そこで、相手のウケを狙うために、腕を大きく振って「喜び」を表現してみることにしました。おおらかと言われているオージーならば、きっと大喜びしてくれるに違いない。
しかし、すれ違いの相対速度は時速200km以上です。タイミングが重要です。また自分の運転中はさすがに危険そうなので、助手席にいる時に試みることにしました。というわけで、細心の注意を払い、対向車から最適視認距離になったと思われた時に、「やっほ〜い!」と両手を思いっきり振ってみました。
しかし、なんと言うことでしょう!ヒュンっ、と時速200km以上ですれ違っているにもかかわらず、相手が明らかに苦笑しているのが静止画のようにはっきりと見えました!手も控えめにしか上げてくれなかったし。
その後も何回か試みましたが、いずれも似たような反応でした。どうやら、このマナーは、やりすぎてはいけない物のようです。これはあくまでも「会釈」程度でなければいけない、ということですね。よくよく考えてみれば、日常の挨拶を相手に全力でされても困惑してしまいますよね。皆さんもオーストラリアのアウトバックで運転する時はくれぐれも気をつけてください。
(館長 加納 学)
市立博物館
電話:01267-6-7545
FAX:01267-6-8455
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