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館長コラム 「こんな化石も展示しています」第8回 ーべレムナイト(前編)-

 このコラムは化石の持つ魅力について、当館に展示されている化石を紹介しながら、当館館長が独断と個人の感想を交えて、皆様に楽しくお伝えする連載です。

なお、当館はアンモナイトの化石の展示は非常に充実しており、またその解説についても詳しい解説板が展示室に設置されているため、このコラムではアンモナイトはたぶん取り上げません。それ以外の、一般の人にはあまり知られていないものの、実は魅力的な様々な古生物達について取り上げて行こうと考えています。

 さて、今回は前編と後編の2回に分けて、中生代の海洋で大繁栄したべレムナイト(イカ類)を中心に取り上げます


 落雷の化石?

べレムナイトは、中生代三畳紀に現れ、中生代を通して世界中の海洋で大繁栄し、白亜紀の末にアンモナイトや恐竜などと共に絶滅してしまったイカの仲間です。現在繁栄しているイカ類の祖先グループに属し、腕も10本あった事から、由緒正しいイカの仲間と言えます。

海外では大量にべレムナイトが見つかることから、世界的には大変よく知られた化石です。しかし残念ながら日本ではあまり見つからない事から、マイナーな存在です。また北海道でもかなりレアで、化石の宝庫と言われる三笠市においても、これまでにたった1個体しか見つかっていないほどです。ちなみに国内でべレムナイトの研究者は5人程度いますが、べレムナイトが完全に自分の専門である、という人は1人いるかどうかだと思われます。

べレムナイトは、体の中に弾丸のような形をした「鞘(さや)」と呼ばれる殻を持つことが最大の特徴です。ご承知のようにイカの体の大半は柔らかい肉からできているため、死ぬと肉は腐ってしまい、化石としては残りにくい傾向があります。しかしべレムナイトは体の中に石灰質の丈夫な鞘(さや)を持っている事から、体が腐ってなくなっても、鞘が化石として保存されることが多いのです。なお、現在ではべレムナイトのような殻を持ったイカ類はいません。



べレムナイトの鞘(さや)の化石  (標本番号MCM-A1206)
「鞘(さや)」は英語名称で rostrum(ロストラム)と呼ばれる。ロストラムという言葉の起源は、古代ローマの軍船(ガレー船)の船首喫水下に取り付けられていた「衝角(rum)」(船首から体当たりして敵船を破壊するための突起)に形が似ている事からきている。
時代:中生代前期ジュラ紀プリンスバッキアン
産地:イギリス ドーセット州 シータウン
所蔵:三笠市立博物館 「蝦夷層群のさまざまな化石」コーナーに展示中 

「べレムナイト」の名称はギリシア語で矢や槍を指す言葉「ベレムノン」から来ており、「アイト」は石という意味です。そのためべレムナイトは日本語で「矢(箭)石(やいし)」と訳されています。もっとも最近は専門家でもべレムナイトのことを「矢石」とはほとんど言いません。素直に「べレムナイト」と言うことが一般的です。

べレムナイトの化石は歴史的にも古くから人々の興味をそそったようです。先に述べたように海外ではべレムナイトの化石は大量に見つかる事も多く、古代の人々の目に触れる機会も多かったと想像されます。化石という存在を理解できていなかった古代の人々にとって、とても自然にできたとは思えない形をしたべレムナイトの鞘の化石は、好奇心を大いに刺激した事でしょう。
実際、イギリスでは青銅器時代の遺跡から当時の人々が収集した鞘の化石が見つかっているそうです。

また、鞘を形成している方解石(炭酸カルシウムの結晶)がしばしば透明感のある美しいオレンジ色を見せることから、「美しい石」としても人々の関心を惹きつけたと思われます。



オレンジ色をしたべレムナイトの鞘(さや)の化石  
時代:中生代前期ジュラ紀プリンスバッキアン
産地:イギリス ドーセット州 シータウン
所蔵:個人蔵

中世の西ヨーロッパでは広くべレムナイトの化石は、稲妻が落雷した場所にできると考えられていたそうです。そうした関わりから、かつてドイツのある地方などでは、落雷よけのまじないとして屋根瓦の下にべレムナイトの化石が置かれていた、ということもあったと言います。

やがて少しづつ自然科学が進歩するとともに、べレムナイトも科学的な扱いを受けるようになってきます。16世紀頃から西ヨーロッパの自然誌書に図入りでべレムナイトの鞘の化石がしばしば登場するようになります。しかしその正体がイカの仲間であるということは長らく謎でした。というのは、べレムナイトのような殻をもったイカは現在は存在していないため、比較する対象がなかったからです。そのため、ウニの棘であるとか、爬虫類やクジラの歯であると考えられたりした事もありました。

べレムナイトがイカの仲間であるということが正しく認識されるようになったのは、ようやく19世紀前半くらいからで、その解剖学的特徴のおおよそが理解できたのは、19世紀の終わりくらいでした。


べレムナイトの殻のつくりと種類

べレムナイトの化石といえば、ほぼ「鞘」の化石のことを指すのですが、それは「鞘」以外の部分がほとんど化石にならないからで、実際にはべレムナイトの殻(殻と言ってもすべて体内にあり、外からは見えません)は3つの部分からなります。



べレムナイトの復元図と内部構造のイメージ図  (拡大図)
「イメージ復元図」
に示したようにべレムナイトの殻は体の外部には露出していないため、外見的には我々のイメージする一般的なイカとそれほどの違和感はなかったと考えられる。ただし、「ひれ」、食材として「耳」と言われる部分、が本当に存在していたかどうかなど、未だに議論されていることもある。
「体内部の殻構造の透視図」に示したように、殻は「前甲」「気房」「鞘」3つに分けられる。体の前方と後方の向きに注意。べレムナイトを含むイカ類は通常は後方に向かって泳ぐことになる。
殻構造の縦断面図」では殻各部の縦断面を示した。気房は「隔壁」によって仕切られた多数の「気室」からなる。気室どうしは、「連室細管」と呼ばれる細い管によって繋がっている。気房と鞘の接続は、気房が鞘に差し込まれるような形となっている。「鞘」は緻密な方解石(ほうかいせき;炭酸カルシウムの結晶)からなる。


前甲は内臓を覆う庇(ひさし)的な構造となっています。薄くてもろいので化石として保存されることはたいへん珍しいです。スルメイカなどの体の中に見られ、よく「イカの骨」と言われるものと、解剖学的に同じ物に相当します。
気房は内部が隔壁によって仕切られた多数の気室からなっています。気室にはガスが入っておりべレムナイトに浮力を与えます。気室は連室細管と呼ばれるパイプによって貫かれており、このパイプは気室内に体液を注入したり吸収する際に使用します。気室中の体液は、べレムナイトの浮力に対するバラストとして作用するので、バランスを取るために注排水の必要があるのです。こうした気房の構造と役割はアンモナイトやオウムガイと同様です(下図参照)。
気房は中空で壊れやすいため、化石として残りにくい。

アンモナイトの殻構造の模式断面図 
アンモナイトもべレムナイトと同様の構造と働きを持つ気房と連室細管を備えている。軟体部(肉や内臓)は住房と呼ばれる部分に収まっている。

殻が巻いているかどうかは別として、アンモナイトやオウムガイなどとべレムナイトとの大きな違いは、軟体部(肉や内蔵など)の主要な部分が殻の中に収められているかどうかです。アンモナイトの軟体部は、「住房」と呼ばれる殻の中に収まっていますが、べレムナイトでは軟体部を収めるための殻は存在しません。

軟体部を殻に収めない体の作りの利点として、べレムナイトはアンモナイトなどよりも高速で泳げるようになった可能性が指摘されています。べレムナイトは現生のイカと同様に、体の中に取り込んだ海水を
ジェット噴射のように強く吐き出して泳いでいました。従って、体内に海水をたくさん取り込むほど噴射のパワーを強くできます。
軟体部が殻に入っていないべレムナイトは、大きく体を膨らませてたくさんの海水を取り込めますが、部屋の容積という制限があるアンモナイトなどは、体をあまり膨らませられないので、相対的にあまり海水を取り込むことができず、高速で泳ぐことはできません



べレムナイトの鞘と気房の縦断面  
(標本番号MCM-K0061)
時代:中生代後期ジュラ紀キンメリッジアン
産地:ドイツ バイエルン州
所蔵:三笠市立博物館 「蝦夷層群のさまざまな化石」コーナーに展示中
気房が鞘に差し込まれる様に接続していることがわかる。この標本では本来、気房内部にあったはずの隔壁や気室は、化石になる時に破壊されてしまったため観察できず、代わりに方解石の結晶が形成されている。
このべレムナイトはトロイヒトリンゲン層と呼ばれるジュラ紀の石灰岩から産出したものである。この石灰岩中にはたくさんのべレムナイトやアンモナイトの化石が含まれていることで有名である。この石灰岩は「ジュラ・マーブル(大理石)」という商品名の石材として世界中に出荷されており、日本国内でもビルの内装材として多く使われている。そのため、この岩に含まれているべレムナイトを国内各地のビルで見ることができる。

は緻密な方解石の結晶からなります。役割としては気房の浮力に対する「重り」と言われています。気房の浮力が大きいので、鞘を重りにして体の後方側を下げないと、海水中で体を水平に保てないためです。


鞘の内部が観察できるべレムナイト
(割れた鞘を開いた状態を示す)
時代:中生代前期ジュラ紀
産地:イギリス ドーセット州 シータウン
所蔵:個人蔵
鞘の一部が割れた事により、内部構造を見ることができる。鞘中央の軸と方解石の筋状の結晶が見られる。また三角錐状の気房の先端が鞘にはまり込んでいる様子がわかる。気房は緻密な鞘に比べて中空で壊れやすいので、化石として残ることは少ない。ただし、鞘にはまり込んでいる部分は、鞘に保護されている状態になるので、この標本のように、鞘とともに保存されることがしばしばある。

べレムナイトには数多くの種類が存在しますが、鞘以外が化石となっていることが少ないため、その種類の分け方は、鞘の特徴に頼る事になります。基本的には鞘の外形の違いをベースとして、(存在すれば)溝の状態や数、気室を作る円錐の頂角などで分けられています。ただし、鞘の形態の違いは微妙なこともあり、完全個体でない場合、種類を見分けるのが難しいことも多くあります。


べレムナイトの鞘の形態の違いの例
時代:中生代前期ジュラ紀プリンスバッキアン
産地:イギリス ドーセット州 シータウン
所蔵:個人蔵
A パッサロテウチス・エロンガータ 1;側面形 2;同種別個体の横断面
B アンジェロテウチス・ミカエル  1;側面形 2;同種別個体の横断面
 Aは横断面がほぼ円形でスリムな形をした弾丸型なのに対し、Bは横断面が四角に近い潰れた円形をしており、鞘はずんぐりとした印象がある。
A2の写真でよく観察できるように、方解石の結晶が中央から放射状に延びているのがわかる。


べレムナイトの軟体部(肉や内臓)の化石

これまで書いてきたように、べレムナイトの軟体部は腐ってしまうので普通は化石になりませんが、まれにべレムナイトの鞘以外の部分が化石となっていることがあります。こうした化石によってべレムナイトの解剖学的特徴がかなり詳しくわかってきたという歴史もあります。

こうした化石が見つかる場所は世界でも大変限られ、主にイギリスとドイツから発見されてきました。こうした例について、今回はドイツの二つの博物館に展示されている標本を用いて紹介します。一つ目はハウフ博物館(
Urwelt-Museum Hauff)で、もう一つは州立シュツットガルト自然史レーヴェントール博物館(Museum am Löwentor)です。

ハウフ博物館は魚竜イクチオサウルスの産地として世界的に有名な南部ドイツ・シュバーヴェン地方ホルツマーデンにある私立の博物館です。19世紀以来現地で採集された魚竜はもちろん、首長竜、海生ワニ、魚類などの世界でも超一級品の標本が展示されています。西欧の化石標本が持つ圧倒的な質の高さを感じさせる博物館です。

レーヴェントール博物館はシュツットガルト市にある州立博物館です。ここでは地元であるシュバーヴェン地方から見つかる様々な中生代の化石を中心に、ホルツマーデン産の素晴らしい化石も多く展示しています。また世界中の様々な化石も展示しており、展示標本が充実している上に見やすくディスプレイされており、見学のおすすめ度の高い博物館です。


腕などが保存されたべレムナイト
時代:中生代前期ジュラ紀
産地:ドイツ バーデン・ヴュルテンベルク州 ホルツマーデン
撮影地:ハウフ博物館 (Urwelt-Museum Hauff);ドイツ ホルツマーデン
この標本では腕の痕跡などが保存されている。体の部位的な位置関係がわかるように写真の上にべレムナイトのイメージ図を配した。べレムナイトは腕に吸盤の代わりに鋭いカギ爪を持っていた。この標本では腕の肉が無くなっても、カギ爪の配列によって腕の輪郭を見て取ることができる。カギ爪はキチン質からなるため比較的保存されやすい。キチン質はエビ・カニなどの殻を作っている物質で石灰分とタンパク質からなり分解されにくい性質を持つ。

上に示した標本などの観察から、べレムナイトは現在生きているイカ類と同様に腕が10本あることがわかっています。腕の長さはどれもほぼ等しく、現生のイカ類には存在する一対の「触腕(しょくわん)」と呼ばれる腕(餌などの捕獲に使う伸縮する腕)はなかったとされています。


べレムナイトのカギ爪
カギ爪の役割は、現生のイカの吸盤と同様、獲物を捕まえる時に使ったと考えられる。実際にべレムナイトのカギ爪に絡まった状態の魚の化石が発見されている。

カギ爪の形状は種類や位置によっても異なります。カギ爪だけがバラバラで地層中から見つかる事もありますが、べレムナイトの種類毎の爪の形の違いがまだよくわかっていないので、爪だけではべレムナイトの種類までは特定できません。

べレムナイトの種類にもよりますが、カギ爪は1本の腕にそれぞれ40個程度が2列に分かれて生えていました(次に示す写真を参照)。1本の腕の中でもカギ爪の大きさが異なり、腕の根本から先端に向かって大きくなって行き、中央部で最大となり、その後先端に向かって再び小さくなって行くとされています。

なお、
現生のイカの大半は、腕にはカギ爪ではなくて吸盤を持っていますが、一部のグループにはカギ爪が見られることがあります。また、「触腕」と呼ばれる獲物を捕まえるために特化した腕にだけカギ爪を持っている種類もいます。




2列のカギ爪とカギ爪(大)
時代:中生代前期ジュラ紀
産地:ドイツ バーデン・ヴュルテンベルク州 ホルツマーデン
撮影地:レーヴェントール博物館 (Museum am Löwentor);ドイツ シュツットガルト市
この標本では、べレムナイトが大きく腕を広げた状態で化石になっていることがわかる。1本の腕に2列のカギ爪があることがわかる。また、普通のカギ爪と比べて圧倒的に巨大で半円形をしたカギ爪(大);メガ・フック(mega-hook)が2個見られる。この大きなカギ爪の機能については諸説あるが、全ての標本にカギ爪(大)が見られるわけではない事から、これはオスに特有の器官で、生殖時にメスを捕まえるために使用していたのではないかという説が有力である。その説に従えばこの標本は「オス」という事になる。



内蔵などの器官の痕跡が保存されたべレムナイト
時代:中生代前期ジュラ紀
産地:ドイツ バーデン・ヴュルテンベルク州 オームデン
撮影地:レーヴェントール博物館 (Museum am Löwentor);ドイツ シュツットガルト市
べレムナイトの化石の中には、内蔵などの器官の痕跡が化石化していることがあるため、解剖学的特徴もかなり詳しく調べられている。例えば、現在のイカ類と同じように墨をためる袋(墨汁嚢;ぼくじゅうのう)もあったことがわかっている。


後編では、べレムナイトの暮らしと、日本のべレムナイトそして北海道で見つかっているべレムナイト以外のイカ類の化石について紹介します。

(後編に続く)



余 談:「べレムナイトの王国」

本編の冒頭で、海外ではべレムナイトの化石がよく見つかる、という話を書きました。実際、簡単にべレムナイトの化石が見つかる場所がしばしばあります。今回はそのような場所の一つについてご紹介したいと思います。

今回紹介する場所は、イギリス南西部ドーセット州にある、ジュラ紀の化石がたくさん見つかることで世界的に「超」がつくほど有名な街「ライム・レジス(Lyme Regis)」のすぐ隣にあるシータウンという小さな街の海岸です。


ライム・レジスを含むドーセット州の海岸には、長さ100kmあまりにわたってジュラ紀の地層が大変よく露出しています。地質学的な重要性、そしてそこから多くの化石が発見されている事から、世界遺産(自然)として「ジュラシック・コースト」の名称で登録されています。

古くからこの付近より化石が見つかることはよく知られていましたが、特に19世紀始め頃、ライム・レジス付近から大量に質の良い化石が発見され、当時のイギリスの自然科学者たちによって精力的に研究されるようにました。その中には世界で初めて発見された首長竜や魚竜の化石なども含まれていました。
そうした事などから化石産地としてのライム・レジスの名は世界的に有名となってゆきました。

現在、ジュラシック・コーストには多くの研究者のみならず、化石目当ての観光客も訪れますが、意外なことに世界遺産にも関わらず化石採集が許されています。もちろん地層そのものを掘ったり削ったりすることは厳しく規制されていますが、落ちている化石を拾って持ち帰るのは自由です。

これは、落ちている化石の大半は放置すると波で風化して消えてしまう運命を辿ると想像されますので、採集を禁止するよりも許可した方がむしろ人々の役に立つ、という合理的判断なのだろうと思われます。そんな事からライム・レジス周辺では、観光シーズンで天気の良い日には潮の引いた海岸で多くの人々が化石探しをしている姿を見ることができます。


ライム・レジス周辺の海岸で化石採集を楽しむ観光客
撮影地:イギリス ドーセット州 チャーマス
日本での化石採集と異なり、地層を掘ったり、岩を割ったりしなくても、化石が「落ちている」ので、特段の装備も必要なく一般の人でも容易に化石採集を楽しむことができる。
左手に見える暗灰色の崖はジュラ紀層。

ジュラシック・コーストに分布するジュラ紀層の大半は、非常に大変もろく、波による浸食はもちろん、雨によっても溶けて崩れてゆきます。ジュラ紀層には化石がたくさん含まれているので、地層が溶けて崩れると、その中からたくさんの化石が現れます。人々が拾っている化石は、このように地層から洗い出された物です。



波打ち際で見られる崩れて溶けたジュラ紀層
撮影地:イギリス ドーセット州 シータウン
ジュラ紀層を形成している粘土岩(ねんどがん)は浸食によって容易に崩れて、この写真のように「粘土」状になってしまう。この「粘土」中に化石が含まれている可能性があるが、ネチネチで、とてもこの中から探せるような状態ではない。こうした「粘土」は潮が満ちて来ると波によって次第に崩され、その繰り返しによって化石が洗い出される。

たくさんの人が化石拾いをすると、化石が無くなってしまう心配が感じられますが、ここでは元々地層に多くの化石が含まれていること、地層の浸食がどんどん進むので新たな化石が供給され続けること、などの理由から、化石が拾えなくなってしまうような事態は無さそうです。





前期ジュラ紀層(約1億9000万年前)の露頭
撮影地:イギリス ドーセット州 シータウン
黄色丸で人物を囲った。露頭の高さは100mを超えると考えられる。地層は細かい泥が固まった「粘土岩」からできている。崖は非常に崩れやすく、しばしば落石があるため、崖の直下にはとても近寄ることはできない。この崖の地層の一部分にべレムナイトがたくさん含まれている。満潮時には崖の直下まで海水が来る。



べレムナイトを探している様子
ゴロゴロしているのが、右側にある崖から落ちてきた岩で、岩と岩の間で落ちている化石を探す。ここは満潮時には全て海面下となる。




発見されたべレムナイトの鞘
この標本は、運よくかなり完全に近いが、ここで発見される化石の大半は、場合によっては何年も波の力によって転がされ続けている物であるため、何らかの破壊や摩耗を受けているものが大半で、完全なものはかなり珍しい。




落ちているべレムナイトの様子
画面中に確認できるべレムナイトの鞘を矢印で示した。このように30cm四方程度の場所に40個以上のべレムナイトを見つけるられることもある。ただし、先に述べたような理由で小さなかけらとなっているものが多いので、大半の化石は採集する価値はない。それでもその量には驚かされる。この場所が「べレムナイトの王国」と言われる所以である。べレムナイト以外にもアンモナイトやウミユリのかけらが写っているので、興味のある方は拡大写真を参照。
拡大写真




採集されたべレムナイトの一部
このように大小様々で、様々な状態のべレムナイトの鞘を拾うことができた。これらの鞘であまり摩耗していないものは、透明感のあるオレンジ色をしているが、大半のものは摩耗によってくすんだ色となってしまっている。
余談であるが、べレムナイトの鞘は外形が銃弾に似ているので、これらを日本に持ち帰るときに、空港のX線検査であらぬ疑いをかけられないだろうか、と少し心配になった(別にそのようなことはなかった)。




べレムナイトを大量に含む地層
地層の表面に大量のべレムナイトが散らばるようにして浮き出ているのが観察できる。この地点は潮が満ちて来ると水没する。海岸で拾えるべレムナイトはこの地層が浸食されて転がり落ちたものである。べレムナイトを大量に含む地層は厚さ10センチ程度である。この部分以外では地層にそれほどべレムナイトは含まれていない。
なお、地層を掘ることは法的に禁止されているので、ここを削って採集してはいけない。



べレムナイトを大量に含む地層の表面の拡大
上の写真の一部を拡大した。鞘の形が異なる数種類のべレムナイトを確認できる。べレムナイトの専門家はべレムナイト化石が密集した産状のことを「べレムナイトの戦場(Belemnite Battle Field)」と呼んでおり、実際に用語として学術論文でも用いられている。言葉の由来は、たくさん散らばっているべレムナイトの鞘が、まるで戦場を飛び交う弾丸のように見える事に由来する。


べレムナイトの化石が海外ではたくさん見つかっていることがお分かりいただけたと思います。このように国内に比べて海外は相対的に化石採集が容易なことがしばしばあります。ですので、海外に化石採集に行くと「いいなあ....」と羨ましい気分にさせられることがよくあります。

ところで、なぜ海外の方が化石の採集が容易なことが多いのか、という一般論についてはいくつか理由があります。いずれそのような事についても、触れてゆきたいと考えています。


(館長 加納 学)

  

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