アンモナイト・イヤー企画 「今月のアンモナイト」2025年2月号
当館は2024年に、開館45周年を迎えました。そこで、46年目に当たるこの2025年を「アンモナイト・イヤー」と位置付け、アンモナイトいっぱいの年にしたいと考えています。その取り組みのひとつとして、毎月、収蔵庫からアンモナイト1点を選び出し、展示するロビー展示シリーズ「今月のアンモナイト」を開催しています。2025年2月、第2回目の「今月のアンモナイト」は、「ノワキテス」です。
この化石は、昨年(2024年)夏に、三笠市内から発見されたものです。一見すると、北海道内からは比較的たくさん化石が見つかる「ユーパキディスカス」という種類のアンモナイトに見えます。しかし、ユーパキディスカスに比べると、このアンモナイトは、殻が左右方向に細く、縫合線(アンモナイトの殻の中にある仕切り板の折れ曲がり)が単純という違いがあります。
さらに、この化石が発見された場所の周辺からは、白亜紀の中でも、チューロニアン期からコニアシアン期にかけての時代(今からおよそ8900万年前)を示す種類のアンモナイトやイノセラムス化石が見つかりました。北海道において、ユーパキディスカスが繁栄するのは、コニアシアン期の次の時代であるサントニアン期(今からおよそ8630〜8360万年前)以降のことなので、このアンモナイトは、ユーパキディスカスにしてはやや古すぎる可能性もあります。
そこでこの化石は、「ノワキテス」という種類のアンモナイトである可能性が出てきました。ノワキテスは、ヨーロッパやインド、マダガスカル、テキサスなどでは化石が比較的たくさん見つかるのに対し、日本ではこれまでに、2個体しか化石が見つかっていませんでした。その2個体のうち1個体は三笠産で「ノワキテス・ミカサエンシス」、もう1個体は夕張産で「ノワキテス・ユーバレンシス」という名前がつけられています。この化石はその中でも、「ノワキテス・ミカサエンシス」に比較的よく似ています。


奇しくも、「ノワキテス・ミカサエンシス」と「ノワキテス・ユーバレンシス」の化石が発見・命名されたのは、この三笠市立博物館が開館したのと同じ、1979年のことでした。つまり、このアンモナイトが本当にノワキテスであれば、三笠市立博物館創設以来46年ぶりに発見された、日本産ノワキテス第3標本ということになります。

化石発見時の様子
海外から見つかるノワキテスは、直径が10 cmにも満たない小型の標本が多数を占めます。それに対して、46年前に見つかったノワキテス・ミカサエンシスは直径14 cm、今回発見されたこのノワキテス”第3標本”は直径17 cmにも達します。白亜紀当時、太平洋の西部では、少なくとも個体数という点では、決してノワキテスは大繁栄したとは言えないはずですが、それにも関わらず大型の個体が見つかるのはなぜなのでしょう? ノワキテスは、まだまだ研究の余地がたくさんある種類のアンモナイトなのです。
2月の「今月のアンモナイト」展示では、このノワキテス“第3標本”に加えて、比較用に、46年前に発見されたノワキテス・ミカサエンシスと、ノワキテスに近縁な種類として、ユーパキディスカス・ハラダイとメヌイテス・ファシコスタタスを展示しています。ノワキテス・ミカサエンシスは、普段から当館の常設展に展示されている標本ですが、ユーパキディスカス・ハラダイとメヌイテス・ファシコスタタスは、化石が寄贈されて以来、初めての展示となる標本です。
これらは、2月いっぱい三笠市立博物館ロビーにて展示しています。期間限定の展示ですので、この機会をお見逃しなく!
今月のアンモナイト バックナンバー
2025年1月電話:01267-6-7545
FAX:01267-6-8455